
BALLROOM DANCE GUIDE
社交ダンスの世界で、ときどき耳にする
「WDC」と「WDSF」。
「何が違うの?」
「日本の団体はどちらと関係があるの?」
「ブラックプールはどっちなの?」
普通に社交ダンスを楽しむだけなら、
知らなくても困ることはほとんどありません。
ただ、世界選手権や海外の競技ダンスを見ていると、
この2つの名前がよく登場します。
WDCとWDSFとは?
世界のボールルームダンス・DanceSportには、
大きな国際組織として
WDC(World Dance Council)と
WDSF(World DanceSport Federation)
があります。
ただし、
「世界の社交ダンスが完全に二つの陣営へ分かれている」
と考えるのは正確ではありません。
それぞれ歴史、組織構造、競技体系、
各国団体との関係が異なっています。
| WDC | WDSF | |
|---|---|---|
| 正式名称 | World Dance Council | World DanceSport Federation |
| 現在の組織につながる設立 | 1950年 | 1957年 |
| 前史 | International Council of Ballroom Dancing(ICBD) | 1935年設立のFIDAまで遡る |
| 現名称 | 2006年からWDC | 2011年からWDSF |
| 主な競技・活動領域 |
Professional Ballroom / Latinなどの競技、 ダンス教師・スクール・ソーシャルダンス関連 |
Standard / Latinを含むDanceSport競技、 各種国際競技・選手権 |
| プロ部門 | あり | あり |
| IOCとの関係 | ― | 1997年にIOC正式認承 |
| 日本との主な関係 | JBDFなどと深い関係 | JDSFがFull Member |
WDCとは?|1950年に設立された国際組織
WDCの直接のルーツは1950年です。
1950年9月22日、
スコットランドのエディンバラで
International Council of Ballroom Dancing
(ICBD)として設立されました。
その後、
World Dance & Dance Sport Council
(WD&DSC)という名称を経て、
2006年6月から現在の
World Dance Council(WDC)
となっています。
WDCには、
プロ競技を扱う
World Competitive Dance Committee
と、
ダンススクール・ダンス教師・ソーシャルダンスなどを扱う
World Social Dance Committee
があります。
WDCは「プロ競技だけ」の組織ではありません。
プロフェッショナル競技との結びつきが非常に強い一方で、
ダンス教師やスクール、ソーシャルダンスに関する活動も行っています。
WDSFとは?|現在の組織の起点は1957年
現在のWDSFへ直接つながる組織は、
1957年5月12日にドイツ・ヴィースバーデンで設立された
International Council of Amateur Dancers
(ICAD)です。
ただしWDSF公式の歴史では、
その前史として
1935年にプラハで設立されたFIDA
(Fédération Internationale de Danse pour Amateurs)
まで遡って説明されています。
FIDAは1956年に活動を終え、
翌1957年にICADが設立されました。
その後、
1990年に
International DanceSport Federation
(IDSF)へ名称変更。
2011年には現在の
World DanceSport Federation
(WDSF)
へ名称変更されています。
また、1995年にIOCから暫定認承を受け、
1997年に国際オリンピック委員会(IOC)から
正式認承されています。
WDSFにもプロ部門はある
WDSFはもともとアマチュア競技を中心として発展してきました。
しかし現在は、
プロフェッショナル競技も行われています。
WDSFの歴史では、
2006年にInternational Professional DanceSport Council
(IPDSC)設立方針が示され、
その後Professional Divisionへつながる
プロ競技体系が整備されてきました。
ですから現在は、
「WDC=プロ、WDSF=アマ」
と単純に分けることもできません。
「WDCは芸術、WDSFはスポーツ」なの?
ダンス界ではときどき、
WDCに対して語られるイメージ
伝統・表現・エレガンス
英国を中心として発展してきた
ボールルームダンスの歴史や伝統を
強く感じるという人もいます。
WDSFに対して語られるイメージ
スポーツ・運動性・競技体系
DanceSportとして、
国際スポーツの競技制度や
運動性を強く感じるという人もいます。
ただし、これは両団体が公式に定めている分類ではありません。
ダンス界で語られることのある
大まかな印象・競技文化の違いです。
WDCも高度な競技ダンスですし、
WDSFでも音楽性、表現力、技術、
カップルとしての完成度などが重要なのは当然です。
したがって、
「WDCは芸術だけ」
「WDSFはスポーツだけ」
と断定するのは正確ではありません。
ブラックプールはWDCの大会なの?
世界のボールルームダンスを語るときに
外せない大会の一つが、
イギリス・ブラックプールで行われる
Blackpool Dance Festivalです。
その中でもBritish Open Championships、
いわゆる「ブラックプール」は、
世界中のトップダンサーが集まる
非常に歴史と知名度の高い大会です。
ただし、ブラックプールは
「WDCが主催している大会」ではありません。
大会はBlackpool側の運営組織によって開催されています。
一方で、
British OpenはWDCのワールドランキングでも
重要な対象大会として扱われています。
そのため、
WDC主催ではないものの、
WDC競技界との関係が非常に深い大会
と考えるのが分かりやすいでしょう。
日本ではどうなっているの?
日本には複数の競技団体・教師団体が存在しています。
そのため、
日本の団体をすべて
「WDC陣営」「WDSF陣営」
の二つへ単純に分けるのは正確ではありません。
JDSFとWDSF
公益社団法人 日本ダンススポーツ連盟
(JDSF)は、
WDSFの公式サイトで
日本のFull Member
として登録されています。
WDSFの日本における正式な加盟団体として
位置付けられています。
JBDFとWDC
一方、
公益財団法人 日本ボールルームダンス連盟
(JBDF)は、
WDCとの長い関係を持っています。
例えば2025年には、
JBDF主催・WDC公認で
WDC World Professional Latin Championships
と
WDC World Professional Ballroom Championships
が日本で開催されました。
また、
現在のWDC Board of Directorsにも
日本人関係者が参加しています。
日本の団体関係は、
「WDC軍 vs WDSF軍」
と単純に二分できるものではありません。
加盟、競技会の公認、選手登録、
国際大会との関係などは、
団体ごとに確認する必要があります。
「スタンダード」が「ボールルーム」になった?
最近、日本でも
「スタンダード」ではなく
「ボールルーム」という言葉を
目にする機会が増えました。
JBDFの現在の大会案内や競技区分では、
ボールルーム、
ラテン
という表記が使われています。
2026年の日本インターナショナルダンス選手権大会でも、
BALLROOM
ボールルーム
W・T・Vw・F・Q
LATIN
ラテン
C・S・R・P・J
という名称が使用されています。
ただし、
「スタンダード」「ラテンアメリカン」
という言葉が完全に消えたわけではありません。
教本や過去の資料、
団体・大会によっては、
従来の表記を見ることもあります。
結局、WDCとWDSFはどっちが上なの?
これは単純には比較できません。
両者は組織体系も競技会もランキングも異なり、
それぞれに世界トップレベルのダンサーがいます。
また、
ボールルームダンスやラテンダンスは、
陸上競技のタイムのように
一つの数字だけで順位が決まる競技ではありません。
技術、音楽性、動き、
パートナーシップ、表現、
競技としての完成度など、
多くの要素が評価されます。
そのため、
「WDCの方が上」
「WDSFの方が上」
と一律に結論づけることはできません。
MDSとしては、どちら派?
私自身はJBDFに所属しています。
ただ、
日々のレッスンで
WDCとWDSFの違いを意識することは
ほとんどありません。
教室で大切なのは、
その人が、楽しく踊れること。
少しずつできることが増えて、
「今日も踊って楽しかった」と思えること。
世界の競技団体や歴史を知ることは、
社交ダンスを見る楽しみを広げてくれます。
でも、
社交ダンスを楽しむために
WDCとWDSFのどちらかを
選ばなければならないわけではありません。
まずは好きな音楽で、
好きなダンスを楽しむ。
MDSとしては、
それが一番大切だと考えています。